ジーコとケンジの欲望の記録

雨ニモマケテ、風ニモマケテ、慾マミレ、サウイウヒトガ、コノワタシダ

ストレッサーを倒すんだ、俺は

お腹の肉が気になって、肉体改造をしないといけないなと思い、ボクササイズの「b-monster」というフィットネスジムを体験してきた。

 

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「b-monster」というのは、CLUBのような光と音楽の演出の中で、筋トレやボクシングをしたりするフィットネスジムのことだ。

 


b-monster【BRAND MOVIE short ver】

 

パリピ。もう、めっちゃパリピ


とはいえ、暗闇だからリズム感が無くても恥ずかしい思いをしないし、空手やってたから殴る系の動きは身についているし、ミット打ちやスパーリングみたいに相手と何かをするわけじゃ無いから、他人に気を遣うことはない。そして、パリピ感が養われる。


トライアルが始まる前に、簡単な説明を受ける。ジャブ、ストレート、フック、アッパーなどの打撃から、ダンクやダッキングなどの体の裁き方なども取り入れられている。


ファイティングポーズを取って打撃をするとテンションが上がる。


周りを見ると年代は20代後半から30代くらいの人が中心といったところ。パリピ感のあるジムだけに、いかつい感じの人が多い。お腹の突き出たおじさんや、見るからに「ダイエットしたいですぅ、ブヒィ」みたいなポヨポヨの人は少ない。


男女比は女性の方が多い気がした。しかも、ブラトップ率が高い。オシャレ系女子がジムで着てたり、女子ボクサーが着るやつ。凄いストイックで「闘う女!」という雰囲気が出ているのだが、目のやり場に困る。そして俺の隣のサンドバッグにも、ブラトップの女性がいた。小柄ながらに強そうだ。


それまで鳴っていた音楽が止まり、証明が落とされる。パフォーマー(ここではトレーナーではなくパフォーマーと呼ぶ)が自己紹介と簡単な挨拶をすると、場内からは拍手や歓声が聞こえてきた。


そして、パフォーマーもブラトップを身につけた女性だった。こういう場所以外では絶対に関わることのないタイプの女性。


なんだかCLUBみたいな雰囲気だ。CLUBなんてパリピみたいなところ行ったことないけど。


そして大音量のEDMが鳴り響き、パフォーマーはDJみたいに流暢な英語で場を盛り上げる。


最初は軽くジャンプをしたりステップを踏んだりする。音楽に体を合わせていく感じだ。


それからスクワットをしたり、腕立てをしたり、腹筋をしたり、の筋トレパートに入る。ノンストップで色んな部位の筋トレをしていく。


キツい。開始からわずか数分で、汗がしたたり落ち、体がいうことをきかなくなった。


自分の体力の無さを痛感している中、隣の女性をみると、難なくその流れについていくことができていた。さすがはブラトップ女子。


「オーケー、ウォーターブレイク!! さぁ、次はシャドーいきます。まずはジャブから、オーケー、スリー、ツー、ワン、ゴー!!!」


水を飲むのもそこそこに、次はシャドーパートに入る。


「ジャブ、ジャブ、ジャブ」


筋トレで体力を奪われていて、思うように体が動かない。汗が床に落ちていくのが分かる。


それからストレートやらフックやらアッパーやらを一通り行う。


ウォーターブレイクが入ったあと、いよいよグローブを装着してサンドバッグ打ちに入る。


グローブを装着すると気持ちが引き締まる。空手家もどきの感覚が蘇る。


シャドーと同じようにジャブやらストレートやらアッパーやらの動きをする。今度はサンドバッグ相手だから手に跳ね返りがくる。しかし、体力はもっていかれたので、力強いパンチを打つことができない。


ひと通り基本的な動きを終えあと、これらのコンビネーションへと入る。


「ジャブ、ジャブ、フック、フック、アッパー、ダンク、フック!!」


みたいな動き。


パリピ感と同じくらいに欠如しているリズム感。口を動かして自分の動きを確認しながらサンドバッグに拳をぶつける。


「えっと、えっと、ジャブ、ジャブ、フック、アッパ…じゃねぇ、フックだ」


みたいになって、力を入れるとか入れないとか、腰を捻るとか体幹だとか、それ以前に動きに合わせるのに必死になる。分からなくなったら前の人の動きを見る。


隣を見ると、やっぱりリズミカルに動きについていけている。凄い。有段者だ。ブラトップは有段者のみに身につけることが許されているのだろう。


サンドバッグパートは後半になるとラッシュが多くなる。ただひたすらパンチを出して己の肉体を追い込んでいく。


もう、体はボロボロだったので、殴るというよりも触るに近い感じで、サンドバッグをポコポコ叩いていた。


そして次はフリーパート。各自が好きな動きをしていいというパート。もう、何もできないから、サンドバッグを殴ってるフリをした。腕を振り回してるだけみたいな動きでやり過ごした。


これでようやくプログラムは終了か、この後はクールダウンへと入っていくのか…


と、思いきや、肉体酷使はまだ終わりじゃなかった。


「プッシュアップ!!!!」


周りはグローブのまま床に手をつき、腕立ての体勢をとる。


そして、腕立て伏せの姿勢のままキープさせられた後に腕立てを命令される。


いや、バカだろ!!


あれだけ筋トレしてサンドバッグ殴って、ヘトヘトになっているのに、また筋トレさせるのか!!!!


もう、驚きを通り越して失笑してしまった。ニヤニヤしてしまった。暗闇だからよかったけど、明るかったら、かなり気持ち悪い顔をしていたと思う。


しかし、周りはへこたれることなく腕立てをしている。隣のブラトップ女子もしっかり腕立てをしている。


初めの筋トレパートではちゃんとアゴを床につけたけど、もう、この時は腕が曲がるか曲がらないかの、運動部の練習でやったら「手を抜いてんじゃねぇよ!」と先輩から蹴り飛ばされそうな腕立て伏せをするのが精一杯だった。


額から汗が滴り落ちる。水をかぶったように全身が汗まみれになる。目や口に汗が入って、汗の塩分がヒリヒリ沁みる。


これはストイック過ぎるぞ。


「EDMに乗せてCLUB感覚で楽しく体を鍛えましょう! サンドバッグを叩いてストレスも解消🎵 さぁ、みんな、レッツボクササイズ!」


みたいなノリだと思っていた。サンドバッグ殴るのは二の腕の肉解消とか、体を捻ることでウエストが引き締まるとか、暗闇で動くことで周りの目を気にしなくていいとか。


EDMがガンガン鳴っているから気持ちは紛らわされるけど、音楽が流れていなかったら軍隊の訓練だぞ、これ。


2回目の筋トレが終わって、またサンドバッグを打つように指示される。今度は力を入れて打て、と。


「パワー!! パワー!! モアー、モアー、パワー、パワー、パワー!!!」


パフォーマーの女性が、がなり声を上げて我々を煽る。それに合わせて周りの人たちは、さらに力を込めてサンドバッグを叩く。俺は、ヤケになる力さえも残ってなくて、虫さえも殺せないようなパンチを繰り出す。


パフォーマーの怒声、苦痛の声や乱れる呼吸の音をかき消すようにガンガン鳴り響くEDM、動かない体にムチを打つように飛び交うレーザー光。


苦しい、苦しい、苦しい。


俺はとんでもないところに足を踏み入れてしまったようだ。


苦しい、苦しい、苦しい。


体が防衛体制をとっていて、力を思うように出せない。


苦しい、苦しい、苦しい。


周りを見れば、みんなしっかりついていっている。


苦しい、苦しい、苦しい。


小柄な隣の女性も、暗くて表情は見えないが、動きが乱れている様子はない。


苦しい、苦しい、苦しい。


それに比べて、自分はこんなに体力がないものかと、絶望感に打ちひしがれる。


苦しい、苦しい、苦しい。


苦しい、苦しい、苦しい。


苦しい、苦しい、苦しい。


こんなに苦しいのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「嫌いじゃない!」


むしろ、好き。このストイックな感じを求めていた。


自分のペースで筋トレをするフィットネスジムとは違う。45分間、音楽に合わせてノンストップで体を動かさなくてはいけない。いくら暗闇で周りの目は気にならないとはいえ、やっぱり、周りのシルエットに自分も同化しなくてはという気分になる。


やらざるを得ない状況に追い込まれるのだ。「今日はこの辺でいいやー」と途中で諦めることができない。プログラムが始まったら、終わるまで出られない追い詰められた状況。外部から強制的に追い込まれないと、俺はすぐに自分を甘やかせてしまうのだ。


それに、このストイックなプログラムについていけて、動きのコンビネーションにもしっかり対応できるようになったら、機敏に動けるようになるのではないか。鈍臭い自分を変えることができる。


自分を変えたいんだろ?


お腹の肉のことを考えずに生きたいんだろ?


裸で歩いても恥ずかしくないナイスバディにしたいんだろ?


しかし。


しかし、だ。


それに費やす経済的な余裕がない。


カードの支払い等で収入のほとんどが消える。そこにさらに追加するだなんて、正気の沙汰じゃない。


ここはゆとりができてから動く方が賢明だ。


すると、俺の中から「内なる声」が聞こえてきた。


「そんなことを言っていたら、お前は一生、動けずにいる。躊躇うのが『金銭的な理由』だけならば、それは手にする必要のあるものなのだ。


お金なんか、働いていたら後からいくらだって取り返すことができる。しかし、失った時間はどんなに頑張っても返ってくることはない。


それにお前のしようとしていることは浪費ではない。健康的な肉体と精神を手に得たいという明確かつ健全な目的があるのだ。それを手にすることで得られる幸せに比べたら、金などというつまらないことに苦しめられるな。


人はパンのみにて生くるものに非ず。


お前の本当の望みは何だ?」

 

俺の望み…

 

俺が本当に望むものとは…

 

「何を悩むことがあるのか。お前はもう知っているはずだ。自分が何を欲しているのかを…」

 

そう、俺にとっての望みとは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健康で強靭な心身を手に入れることだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ということで、入会した。

 

いや、聞いてほしい。

 

俺は気づいた。浪費してしまうのは、肉体と精神が不健康だからだということに。

 

つまり、肉体と精神とが健康になれさえすれば、無駄なことに金を使わずに済むのだ。

 

これが習慣になれば、お腹の贅肉が落ちるのはもちろんのこと、体力がついて健康的な体になる。筋肉もついて引き締まった体を手に入れることができる。

 

その結果、自分に自信がつき、精神が健康になり、心穏やかに生きることができるのだ。

 

心穏やかに生きることによって、仕事も順調に進み、思わぬところでチャンスにめぐり合い、それがきっかけで収入がアップして、お金持ちになれるのだ。

 

始めるのは今なのだ。自分を変えたいと思ったその日が、幸せな人生の第一歩なのだ。

 

その為に、どうして金銭的なことで悩むことがあるだろうか。金なんて後からいくらだって稼げる。そんなものに俺は振り回されるものか!!

最近の俺のストレス

最近の俺のストレス。


もう、毎日、俺の精神を蝕み、苦しめるもの。


これさえなければ、心が平穏に過ごせるもの。


今の自分の生活にとって最も障壁となっているもの。


それは、お腹のぜい肉である。


教員の時は授業などで立っているか、座っていても面談等で人と話していて気にしていないかがほとんどだった。


しかし、今は黙々とパソコンに向かって作業している。キーボードを打つ時や画面を確認するときに前屈みになると、自分の腹の肉がふてぶてしく存在を主張してくる。


いや、腹の肉が気になるようになったのではない。実際、太ったのだ。去年、問題なく履けていたズボンやシャツがとてもキツく感じる。


風呂上がりに鏡で自分の腹をみる。お腹の部分がポコンと出ている。


オッサンだ、オッサンの腹だ。


「私がオバさんになったら、あなたはオジさんよ。かっこいいことばっかりいっても、お腹がでてくるのよ」


大人になんかならないぜ!と言っていた俺でも、体はオジさんになっているということか。


だけど、この腹はみっともない。


他の人からどう見られるかということ以上に、自分がこんな醜い体であることが許せない。最近、自分に自信を持てなくなっているのは、もしかすると運動不足で体がブヨブヨになっていることが原因の1つとなっているようだ。


確かに「運動するぞ!」とか言いながらも運動らしい運動はしていない。週末にロードを1時間ほど漕いでいる程度だ。


なんとかしなくてはいけない。この醜い自分の姿を、変えねばならぬ。半裸になった自分を鏡に映してニヤニヤしたい。海を半裸で歩きたい。人前で堂々と半裸になりたい。


人前で半裸になってニヤニヤしたい!!


これまで「人前で裸を見せてニヤニヤしたい!」と思ったことは何度かあり、「裸を見られてニヤニヤする」というのを夢見て2つのフィットネスジムに通っていた。しかし、どちらも最初は頑張って通っていたのだが、次第に足が遠のき、退会をしてしまった。


最初に通っていたのはゴールドジムというところ。あのアーノルド・シュワルツェネッガーも通っていたという、泣く子も黙る世界的に有名なジム。「俺、体を鍛える為にゴールドジム通っているんだよね」というと「ガチ勢かよwww ボディビルダーでも目指してるの?」と言われるようなジム。


なぜ初めてのフィットネスジムをゴールドジムにしたかというと、やるなら本気で体を変えてくれそうなところがよかったし、値段も他のフィットネスジムと大差なかったし、トレーナーも全世界共通のゴールドジムトレーナーの研修とライセンスをもっているみたいだから、しっかりと知識や経験のある人たちに指導してもらおうと思ったのだ。


ゴールドジムは初めてフィットネスジムに通う自分にはベストな環境だった。入会したての人は最初の数回は初心者講習みたいなのを受講し、ストレッチの方法、筋肉の性質、マシンの使い方、正しい負荷のかけ方、食事の仕方などを教わる。また、何を目標としてトレーニングをしていくべきかを一緒に考えてくれる。


でも、結局半年ほど続いたけれど、それからは行かなくなり、退会してしまった。


退会した原因は距離的や時間の問題だった。まず、場所が渋谷駅から徒歩10分程度の場所にあった。職場の乗換駅だから帰りにトレーニングして帰れるね♪的なことを考えたけれど、仕事で疲れてトレーニングに行くモチベーションが上がらなかった。休日に行こうとは思うものの、家から渋谷駅までは1時間ほどかかる。


ジム自体はとてもいいところだった。悪いのは僕の方さ、君じゃない。


そしてゴールドジムを退会してから数年後、家の最寄り駅に24時間営業のフィットネスジムができた。


家の最寄り駅までは自転車で10分弱だ。だから時間や距離的な問題はクリアしている。それに24時間やっている。仕事帰りに立ち寄るのもよし、休日に家から通うのもよし、仕事に行く前に通うのもよし。


今度こそ体を変えられる!!と意気込んで、入会した。ここはゴールドジムみたいにトレーナーが手厚く指導してくれたりするわけではないが、まぁ、2つめのジムだし、話しかければ丁寧に教えてくれるし、いいだろう。


しかし、である。


今度はゴールドジムの時よりも早い時期から行かなくなり、やっぱり退会してしまった。


そこで、俺は気づいた。ゴールドジムを辞めてしまった理由は決して時間や距離的な問題ではなかったのだ。


では、何か? それは次の2つのことが原因だった。

 

①自分のペースでトレーニングができる

フィットネスジムは、器具や場所の提供を行っているだけ。会員はそれを自由に使える。悪い言い方をすれば放置プレーの状態だ。利用者は自分で組み立てたメニューに従って、それをそれぞれがこなす。


だから、自分に甘々な俺は、メニューをつくるのだが、何かしら理由をつけてそのメニューをこなそうとはしない。「胸筋は鍛えるけど、大腿筋は筋肉痛がとれてないから今度でいいや。あと、なんか気持ちが乗らないから最後のランニングは今日は無しにしよう♪」みたいな感じですっ飛ばす。あとは、そのメニューをこなす時間も自分たちで決めるから、ダラダラと過ごしてしまう。

 

②そもそもトレーニング自体がつまらない

そもそも論になるのだが、器具を使っての筋トレはつまらない。例えば大胸筋を鍛える器具なんかは、ただ器具のバーを前に押し出すだけだ。つまらない。それも負荷がかかって重い。力を入れて押さなくてはいけない。そんなことを10回くり返す。つまらない。


「いやいや、それが筋トレなんだろ。それを乗り越えて理想の筋肉がつくんだろうが!」


その通り。しかし、何を言われよと、何を説かれようと、つまらないものはつまらない。数ヶ月後の変化のために、このつまらなさを我慢するにはあまりにも長すぎる。


だから、過去の失敗から自分の肉体改造をするのに、筋トレ器具が置かれただけのフィットネスジムに行ってはいけない。プールがついていようと、天然温泉がついていようと、プロテインが飲み放題だろうと、マッサージが無料サービスで受けられようと、受付のお姉さんがガッキーだろうと、ダメだ。数ヶ月後には会費だけを払っている自分が容易に想像がつく。


本気で体を変えるためには次の2つが必要ということになる。


①トレーニング時間が設定されており、その時間、トレーナーの言う通りのメニューをこなさなければいけない。


②そのトレーニング自体が楽しい!と思うこと。


あと「手ぶらで行っても着替えをレンタルできる」というのがあると望ましい。準備をしていないことを言い訳にしたり、行きたいと思っても着替えを持ってくる忘れたり、何かの予定の前にトレーニングしたいけど汗まみれの服をカバンに入れたくないとかの理由をつぶしたい。気軽に行ける環境をつくりたい。


そういうフィットネスジムを探して、以前、CLUB音楽に合わせて自転車を漕ぐ「FEEL CYCLE」というのにトライアル体験をしてみた。しかし、ペダルと足が固定されていて、ペダルの足を緩めると足首に凄い負担がかかったのと、「これは自分のロードバイクでできるじゃん!」って思ったので入会しなかった。詳しくは以下の記事を参考にされたし。

  

takatoshi0905.hatenadiary.jp

  
それで色々と探したところ「ボクササイズがいいんじゃね?」って思うに至った。ボクササイズとは、ボクシングの動きを取り入れたエクササイズのこと。ジャブとかストレートとかアッパーとかフックとかで体を捻ったり、サンドバッグを叩いたりして体を鍛える。スパーリングなど、相手と拳を交えるようなことをしないからケガをしたりすることは少ない。


学生の時は空手やってたし、社会人になってからはキックボクシングをやってみたり、ムエタイに興味をもってみたり、空道という総合格闘武術をやってみたり、クラヴマガという近接格闘術をやってみたりしている。運動音痴の俺が唯一できるといえるの動きが「殴る蹴る」なのだ。


そして見つけたのが「b-monster」というフィットネスジム。


ここはCLUBのような音楽や照明の中で、ボクシンググローブをつけてシャドーをしたりサンドバッグを叩いたりするというもの。FEELCYCLEのボクササイズ版みたいな感じ。


1つのトレーニングは45分。HPによるとわずか45分のトレーニングで1000kcalを消費できるのだとか。


しかもサンドバッグを叩くだけじゃなくて、腹筋とかスクワットみたいな筋トレも取り入れるということで、とてもキツいのだという。


いいんじゃない、これ。楽しそう。


これ以上、この腹回りの脂肪に苦しめられるのは嫌だ。さっそく、俺はトライアルを申込み、どんな感じなのかを体験してみることにした。


しかし、それはまた別のお話。

いいニュースと悪いニュース

「いいニュースと悪いニュースがある。どちらから聞きたい?」

 


「OK、じゃぁ、まず悪いニュースから聞かせてくれ」

 


「それは、近い将来、おまえが死ぬかもしれないということだ」

 


「そいつは悪いニュースだな。俺はまだ死にたくはない。だがしかし、その理由については、もう一つのニュースを聞いてからにしよう」

 


「そうするかね。私としてもその方が気が楽だ」

 


「ちなみに、そのニュースというのは、本当にいいニュースなのかい?」

 

 

「あぁ、とってもいいニュースだ」

 

 

「私が命の危機にあることをひっくり返す位に?」

 


「もちろん。君がこれを聞いたら、涙を流して両手を上げることだろう。だから、早くこのニュースを私は伝えたくて仕方がない」

 


「そんなにいいニュースなのかい?」

 


「とてもいいニュースだ。」

 


「では、聞かせてもらおうかな、そのいいニュースを」

 


「あぁ。そのいいニュースとは…」

 


「いいニュースとは…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「私がお前を殺せるということだ」
 

私が教師を辞めたあと③最終回

数日後、代表との2次面接を行った。1次面接の担当者の柔らかな雰囲気とは違い、代表は自信のオーラを身にまとったなかなかのオラオラ系の方だった。


「話は彼(1次面接担当者)から聞いてるよ。学校の先生辞めてエンジニアになりたいんだって? 改めてその理由を教えてくれるかな?」


ってことから、面接が始まった。オラオラ系ではあったけど、中身はとっても優しく、俺の話をしっかりと聞いてくれ、共感してくれ、優しい言葉もかけてもらった。


「エンジニアって技術職で年齢とかなんだとかあるけど、別に俺はそういうのあまり関係ないと思ってる。それはもちろん、経験ゼロの人と、ある程度のキャリアを積んでたらレベル差はあるよ。でも、ゼロからでも、やっていけばある程度のレベルにはなる。1年目と3年目はレベルの差は大きいけれど、実は3年目と10年目とかはそんなに差はないんだよね。


俺は技術力だとか実務経験だとかがうんぬんとか気にしてない。それよりも一緒に働きたいどうかで決めてる。結局は人だからね。


だから、うちでは技術力ではなく人柄で採用している。どんなに凄い技術をもっていても人間としてダメな奴は落としてる。


彼とは長い付き合いでね、俺がどんな人を受け入れたいのかをよく分かってるんだよ。


で、君が今、2次面接に来ているってことは、彼が俺に会わせたいと思ったということなんだ。


求人出して何人も面接に人が来てるみたいだけど、実際、俺が面接する人はほとんどいないんだよ」


初めて自分の人柄を評価してもらえた気がした。逆に褒められすぎて気持ち悪くなるくらいだった。


それから待遇面などの話にもなった。


「待遇面なんだけど、そっか、給与か…うーんと、いくら欲しい?」


ぇ?!?!?


給与、こっちで決めていいの?


これは何と言うのが正解なのか分からなかった。求人には20万円からってあったから、最低月給の20万のつもりでいたのだ。月給20万、手取りにしたら16万くらいかしらん。


正直、お安いけれど、お金をもらって勉強する修行期間だと思って受け入れるつもりでいた。しかし、決めていいと言うならば…


とりあえず、前職の給与額を話し、欲をいえばそれくらいもらえたら嬉しいという旨を伝えた。とはいえ、未経験でその額はさすがに…


「あぁ、そのくらいなら全然問題なく出せるよ!」


「?!?!?!?!?!」


いいのか、それで、本当に、それで、いいのか、本当に…???


全くの未経験で、ITに擦りもしないような業種にいたにも関わらず、前職と給与が変わらないとか、それでいいのか。


まさに願ったり叶ったりだ。


「そうだ。今度、うちの会社で定例会と懇親会があるんだ。ぜひ、来てみて社内の雰囲気を感じてみてよ。入社して雰囲気に合わないとかだったら、お互い不幸だからさ。社員の雰囲気見て、そこで決めてくれたらいいよ」


なるほど、即決ではないのか。


しかし、ここまで話が盛り上がったけど、やっぱり採用は見送りで…みたいなことがないとも言えない。最初に受けたところは、それで一ヶ月をムダにしてしまったのだ。


ひょっとして、この定例会と懇親会の俺の振る舞いも採用に入っているんじゃないか。懇親会で社員との関わり方を見て、人との関わり方を見るのかもしれない。初対面の人との関わり方に消極的か、または逆に横柄な態度で接する奴なのか。人柄採用の基準とさせられるのかもしれない。


人柄を褒められた嬉しさと、これは気分よく他の会社に行ってもらうためのフェイクなのではという疑いの気持ちが半分半分で、俺は会社を後にした。


そして、翌週、会社の定例会に行ってきた。


ところで、IT系のエンジニアというとどんな人たちを想像するだろうか。


一日中、パソコンに向かってキーボードをカタカタ打っている人たち。コンピュータとかプログラミングとか、そういうメカニカルなことを考えている人たち。


あまり明るそうな感じの人だとは思えない。むしろ、ヲタクっぽい人を想像するのではないか。少なくとも俺はヲタクだらけの職場を想像していた。


IT業界の人、ましてエンジニアなんてヲタクばかりだと考えていた。人と関わるのが苦手で、人間よりもコンピュータが好きで、表情に覇気のない青白い顔した人たち。


そういえば聞いたことがある。システムエンジニアはみんな表情が無くなっていて老け込んだ人が多いらしい。同じエレベーターに乗っていても、すぐにシステムエンジニアだと分かるのだと。


実は俺がエンジニアになることを躊躇っていた理由の1つでもあった。


教員は子供と接しているからか、他の業種の人よりも若々しく見える。俺も大学の友人たちと久しぶりに会った時に「うわ、全然、変わってない。やっぱり学校の先生って老けないんだね!!」と驚かれたことがある。


だから、ここで教員を辞めて、人とほとんど関わらず、1日パソコンの画面を眺めるような生活をしてしまったら、きっと老けこんでしまう。


それを考えていたからエンジニアになることを躊躇っていた。


そして、定例会の日。


あちこちの現場でシステムつくりをしている社員が、会社に戻ってくる日。


そこで社員の人たちを見て驚いた。全くヲタクヲタクしていない。想像していた雰囲気とはまるで異なっていた。


俺が想像していたのは、青白い顔した人たちが来て、会話どころか挨拶されしっかりできず、そのクセ、一部の人がヲタク独特の喋り方でマニアックな話してギャハハと笑っていて「俺らはコミュ力あるぜ」みたいなイキリ方していて…


…ってことは全くなく、みんな会う度に笑顔で挨拶を交わし、それぞれが楽しく仲良く談笑していた。そして美男美女率が高い。この人たちが「毎日、パソコンとにらめっこしながらプログラムをカタカタやってます」って言っても、そんな風には見えない。


それから定例会は代表の人が中心に話し、進んでいった。


その中で採用状況についても話があった。そこで驚きの事実を知る。


「今、応募者が20人近くありましたが、最終まで残っているのは、ここにいるたかとしさんだけです」


社員から「おー」という、驚きの声が上がった。


しかし、何より驚いたのは俺だ。ここまで来られた要因の応募者が少なかったからじゃないかと思っていたから。


そのあと、懇親会としてお酒やピザなどの食べ物を食べながら、みんなワイワイやっていた。


俺は完全なストレンジャーで、このワイワイに入れるか不安しかなかった。しかし、ここでの振る舞いも採用試験として見られているに違いない。積極的に声をかけていかなくては…


と、力む必要はなかった。周りの人たちは、俺に色々と声をかけてくれた。本当、ビックリするくらいナチュラルに、自己紹介から入ってきて、そこからみんなが俺のところに集まってくる。逆に俺から声をかけると、笑顔で色々と話してくれる。


凄い、凄いぞ。


みんな全然、ヲタクヲタクしてないどころか、社交的で優しい。


そして代表のもとへ挨拶に。


「どう? うちの会社の雰囲気は?」


「いや、ビックリしました。エンジニアって、人間よりもコンピュータと向き合う時間が多いから、もっとヲタクヲタクしていて、人と関わるの苦手な人ばかりかと思ってました。凄い明るくて社交的な人たちばかりで、
色々と考え方を改められました」


「前回の面接でも話した通り、うちは技術よりも人柄で人を採ってるからさ。技術があったって、人間的に問題のある人は採らない。やっぱり、せっかく働くならみんなが楽しく幸せになりたいじゃない」


その人柄採用で、最終まで残ったのが俺か…


これは純粋に嬉しかった。今まで自分は人と上手く関われず、人と心を通わせられない人間なんだと思って苦しんでいたからね。


「じゃあ、また後日、条件面なんかを話し合っていきましょう。採用まで長くてごめんな。でも、やっぱり、社員の雰囲気を見てもらって、完全に納得してから入社して欲しいんだわ。また次回、待ってるからね」


それから次の面談の予定を組むことになった。


そして、後日、その面談で、俺の採用が正式に決定した。


給与は前の職場と同じ。数年やってきて最後の年度の給与と、同じ。すべてが未経験で何も分からないけれど、前職と同じ。


前職が安すぎたのか、新しいところが高いのか。いや、たぶん、その両方だろう。


ということで、1ヶ月以上にも及ぶニート生活にようやく終止符が打たれた。


そして現在、俺は新しい職場に入り1ヶ月以上が経過した。


入社前の懇親会の時と同様に、周りの人たちに優しくしてもらいながら毎日を過ごせている。


本当にパソコンの前にずっと張り付いており、みんな会話を交わさない。俺も1日誰とも会話をせずに、ひたすらパソコンに向き合っている。連絡や伝達はLINEのようなツールを使って伝え合う。教師の時ではありえない光景に初めは慣れずにいた。いや、今も慣れていないかもしれない。


プログラミングは予想以上に難しい。基礎的なことは勉強したつもりでいたが、全く歯が立たない。勉強したことは「知っていて当たり前」の話で、実務レベルのものはその知識を軽々と飛び越えていく複雑さだ。


例えるなら、新聞や雑誌におまけ程度についていたイラストロジックを完成させて、自分は出来ると調子に乗ってイラストロジック専門の雑誌に手を出してしまった感じ。分かるかな…?


しかし、辛くはない。それは全て予想していたこと。人と会話せずに黙々とパソコン画面を見続ける日々を過ごすこと、分からないことがあって頭を悩ませること、常に勉強をしなくてはいけないこと。


でも、思い通りの動きをした時に大きな達成感を得られることは、予想していた以上に大きい。毎日、少しずつ、出来ることが増えていくのは嬉しい。


今は思い切って新しい世界に飛び込んでよかったと思う。


そんなこんなで、長かった俺のニート生活&就活体験記は終わらせようと思う。


疲れた…

私が教師を辞めたあと②

前回までの話。


プログラミングの面白さを知った俺は、ITのエンジニアになることを決意。大学を卒業してずっとやってきた教職の世界から退き、スクールに通いながらプログラミングの勉強をしていた。しかし、就活はうまくいかずに、3月が終わってしまいニートとなる。


詳しい経緯は過去の記事を参照のこと。


採用面接かと思って赴いたけれど、採用面接ではなく、その会社が行なっている転職支援サービスの紹介をされただけだった。さらに、年齢的なことなど、あちこちで散々言われてきたことを改めて言われコテンパンにされた。


本当に自分はこれでいいのか。やっぱり、教職を続けていった方が良かったんじゃないか。プログラミングは趣味で細々とやっていったらよかったんじゃないか。


そんな自信を喪失し、迷い始めた翌日、他の会社の面接に行くことになっていた。


しかし、もう俺は落ちこんだ気持ちを通り越して、開き直っていた。もう、厳しいことを言ってくるような面接をするようなところは、こっちから願い下げてやろうとすら思っていた。


だから、次の企業に対しては、少し斜に構えて挑むつもりでいた。


「ここでまた年齢がうんぬんとか、そういう類のことを言われたら切ろう。こっちだって、そんなの分かってやっているのに、また同じことを言ってきやがったら、こっちから願い下げてやろう」


どこにいったって年齢のことばかり。


そんなことは分かっているのだ。それでも、自分の人生を後悔したくないから、新しい世界に飛び込もうと思っているのだ。


プログラミングの勉強だって、昨年の夏からやっていた。遡れば高校生の時にHTML使ってホームページの運営もしていた。「ITのスキル身につけたら一生安泰かな…」だなんて安易な気持ちでジョブチェンジしてる訳ではないのだ。


そもそも、日々進化していく技術を追いかけるのがITの世界だろう。新しいものに対する意識や好奇心が不可欠な世界だ。


それなのに、新しい世界に飛び込もうとする人間を切り捨ててどうする。


今までの経験や実績なんかを全て捨てて、新しいことに取り組もうとしているんだよ、俺は。そんな人間を「年齢」なんていうつまらないもので判断するだなんて。だから、日本の技術力は他国にどんどん追い抜かれていくんだよ!!!!


そんな好戦的な気持ちで、俺は面接へと挑んでいくことにした。


採用担当者は物腰が柔らかそうな男性だった。しかし、最初はみんな優しく見えるものだ。面接が終わった後は、この人に対してモヤモヤしたものを抱えるに違いない。


「まぁまぁ、面接だなんてそんな堅苦しいものじゃなくて、お互いのことを知る機会みたいな感じでお話ししましょう」


面接官はお茶と名刺を俺に出すと、ゆっくりと向かいの椅子に腰を下ろし、パソコンを開いた。


履歴書と職務履歴書を渡すと、その資料を丹念に読み始めた。


この時間が1番緊張する。しかし、この後の流れは分かっている。どうせ、顔を上げた途端、訝しげな表情と声で俺を批判しにかかるのだろう。


「今まで学校の先生やってたみたいですけど、なんで全く異業種のエンジニアになろうと思ったんですか? 実務経験がものをいうこの業界で、教師の経験なんて全く役に立ちませんよ。


それに覚えることも多いし、ITの技術は常に変わっていくから、『これを覚えれば一生安泰』みたいなのはないです。ずっと新しい技術を勉強し続けなくてはいけません。


だいたい年齢だって、もう30歳を超えてますよね。その年齢から新しいことを始めるって相当な努力が必要ですよ。


それに給与面だってそんなに出せませんよ? 前職より下がりますよ。大卒の初任給のレベルですよ。


勉強しなきゃいけないことたくさんあるし、給与も安い。そんな条件でよければ採用しないこともないですけどね。


まぁ、上との相談にはなりますがねwww」


って来るんだろ。


さぁ、かかってこい。


担当者は書類から顔を上げ、口を開いた。


「前職は教師だったとか凄いですね。なんでそんな立派な職業を辞めてまでエンジニアになろうと思ったんですか?」


え?


あれれ。


否定しないんですか?


「前職が教師だろうが医者だろうが弁護士だろうが、実務経験のない奴はみんなおんなじだ」


ってくるでしょうが。


いや、来いよ。


しかし、否定の言葉は一切なく、俺が教師で何をやっていたのかとか、エンジニアに興味をもったきっかけとか、プログラムはどんなことを勉強してきたのだとか、そんなことを質問された。


「教師の仕事ってよく分からないんですけど、色々と大変だって聞きますが実際はどうなんですか?」


「授業や担任業務はもちろんですが、それ以外に校務分掌があって1日中忙しいです。


昼休みは生徒の面談が入ったり、保護者からの電話があったり、次の授業の準備があったりで昼食を食べられないこともよくありました。


さらに、土曜日は学校説明会や入試があるし、唯一の休みの日曜日は授業準備したりとかで休んだ気がしないし。


それ以外にも学校の広報の為に中学校訪問があったりエトセトラエトセトラ…」


なんだか今まで大変だったことの語りが止まらない。話しながら、今まで自分はよく耐えられたなと自分で感心した。


「ひえー、それは大変だ。凄いんだ、教師って。私はそんなの無理ですね。根性ないからすぐに辞めたくなっちゃいますよ。土日は休みたいし、残業とかせずに家に帰りたいですもの」


たくさん話を聞いてもらい、たくさん共感してもらった。そして、ニート生活を歩むに至った経緯についても話した。


その間も年齢のことや、脅しなどの言葉は出てこなかった。


「御社を受けるまで、プログラミングスクールやあちこちの企業から年齢について言われてしまいました。やっぱり、そういうのってあるんでしょうかね…」


あまりに話題にならなかったので、俺の方から質問をした。


「実は私もエンジニアになったのは、あなたと同じ31歳になってからだったんです。それまで全く別の業界にいて、未経験で飛び込みました。


年齢なんてそんな関係ないって感じましたよ。それよりも、やる気とか人柄の方が大事ですからね」


鳥肌が立った。そんな風に言われたのは初めてだったからだ。一切の否定をしてこない。話を聞いて凄く良いリアクションをしてくれる。いい人だ…


「それで、どうしますかね。私としてはすぐにでも代表との2次面接を受けてもらいたいと思うんですけど」


マジか!?!?


な、な、なんてこった。


就活3社目にして、運命の出会いをしてしまった。


そりゃ、もう即決で!!


…と言いたいところだったが、こういう時こそ落ち着かねばならない。ここで安易に飛びついて後悔してはいけない。


実はこの時、他2社の面接を約束していた。だから、ここで決めてしまうのはまだ早い。


その旨を伝えると嫌な顔をすることなく、むしろ「どうぞどうぞ、他の企業の話も聞いてじっくりと考えてくださいね」という感じで返してくれた。


びっくりするくらいの神対応を受け、俺はその企業を後にした。


捨てる神あれば拾う神ありというのは、こういうことを言うのか。


その前の企業の対応で自信を失いかけていた後だったから、対応1つ1つが心に沁みた。


「ほら見たか! 周りに何を言われようとも、屈辱に体を震わせても、自分の信念を貫き通せば、道は開けるんだよ!!」


もう、帰り道はずっとドヤ顔だったと思う。ようやく自分が認められた。今までの自分を受け入れてもらえた。


それから2社の面接に行った。そのどちらからも内定をもらったが、やはり年齢や経験のことを言われた。


内定をもらって嬉しかったのだが、それでも神対応の企業よりも魅力を感じなかったので内定を辞退した。


しかし、内定辞退の連絡をして、後が無くなったと、不安になってきた。


もし、この企業から不採用をもらったら、また一からやり直しだ。採用通知を受け取った企業の内定辞退を辞退するだなんて出来ない。当然か。


この選択でよかったのか。ひょっとして、最初に受けた企業みたいに、好感触を匂わせておいて切る!みたいなパターンはありえる。


そもそも、1次面接がすんなりといきすぎではないか? 


もしかすると、これ、1次面接はみんな通すやつだ。とりあえず、よっぽど問題がありそうな人以外は代表に会わせて、そこで一気に落とすというパターンだ。


落とされた側も1次で切られるより、2次で切られた方が「社長面接まで行ったんだけどね…」みたいに、落ち込み過ぎることはない。しかも、1次面接で優しく対応してもらえれば、その企業に対しての印象はさほど悪くはならないから他所で悪口言われずに済む。


そうか、やっぱり、そういう魂胆だったのか。


いくら求人で「未経験、異業種からの転職もオッケー。学歴や年齢も不問! 優しい先輩がイチから丁寧に教えますよー」とか書いてあっても、結局は「でも、あなたは年齢が…」みたいに理由をつけて切るつもりだろう。そうだろう、そうに違いない。


続く!!

私が教師を辞めたあと①

これまでのあらすじ。


1次面接で社長と意気投合し、採用確定だろうと勝手に思っていたところ、不採用の通知を受け取った俺。その日からニートとしてゼロからのスタートを歩むことになった。


不採用通知をもらい真っ青になった俺は、すぐに転職サイトを開き、未経験でエンジニアとして募集しているところをあさった。あさりつつ、その企業での実際の労働環境も調べながら慎重に応募した。


かれこれ10社近くはエントリーしたと思う。しかし、その後は書類選考で落とされたり、返事が来なかったりと面接以前の段階で落とされてしまった。


何がいけないのかは予測はできていた。今までITとは無関係の職種であったこと、実務経験が全くないこと、年齢が30歳を越えていること…エトセトラエトセトラ


その中で何社かは実際に面接を取り付けることができた。


早速、1社目の面接に向かうことにした。履歴書と職務履歴書をもって企業へ訪れる。平日の昼間、都内。大学が近くにあり、学生たちが楽しそうにあるいていた。


「そういえば、この大学、昨年度受け持った生徒たちがが数人進学したんだよな」


もし、彼らが俺の姿を見たら何を思うだろうか。自分たちの進路を指導してくれた先生が、今の職を捨て、就活に奔走している。


惨めだな、俺。こんな見っともない姿は見られたくないな…


会社に着き、応接室に案内される。出てきたのは、20代半ばくらいの若い社員だった。IT企業は全体的に若い人が多いから、特に驚きはしなかったが、立場的には企業の社員と求職者。複雑な気持ちになる。


なぜエンジニアを目指そうとしたのか、これまでスクール等でどんなことを勉強していたのか、諸々のことを聞かれた。


「今回、実務未経験でエンジニア希望ということですけれど、ただ、これは言わせてください。30代で実務未経験でエンジニアを目指すのは相当厳しくなります。30歳くらいは、もう、ある程度の経験を積んで、リーダーくらいの地位になってますからね。そういう条件でも採用してくれる企業を探してみますね」


ぇ?


企業を探す、とは?


この会社に就職させてくれるわけじゃないのか。


「弊社は転職サービスをしておりまして、そのサービスにご登録を頂き、弊社から希望に合う企業をご紹介しております。今回、そのサービスのご紹介をと思いまして、いかがでしょう、弊社の求人紹介サービスに、ご登録されますか?」


ここで俺は気がついた。この企業は最初から俺を採用するつもりでなかったのだ。話を聞く体で俺を呼び、最終的に自社サービスに登録させるだけだったのだ。


その後も年齢的に募集している企業が多くはないこと、仮にあったとしても大卒初任給並の給与となること、これからかなりの勉強をし続けなくてはいけないことなど、厳しい面を懇々と説かれた。


「では、登録についての詳しいメールを改めて送りますので、よろしくお願い申し上げます」


時間にして30分弱。俺は屈辱的な思いを抱きながら、企業を後にした。


ここですっかり自信を喪失してしまった。やっぱり年齢の壁は越えられないのか。新しいことを始めるのは無謀なのか。


バカなことしてる? 今までずっと教員をやってきたのだから、これからも続けるべきだったのか。このまま無駄なことは考えずに、教員としてのスキルを身につけ、生涯を教育に捧げていけばよかったのか。


そもそも、他のことをしたいと思うこと自体、教職に対してしっかりと向き合わなかったからなのではないか。そんなことで他のことに向き合うことができるのか。


もう、エンジニアなんて未知な分野を考えず、今から非常勤として募集しているところに行くべきか。または塾講師とか学校以外の場所で勉強を教えていくとか。


やっぱりバカだったか、軽率だったか。もっと現実を見るべきなのか。


もし、このままずっと決まらなかったら、どうするつもりなのか…

 

そして、この企業からのサービス登録のための連絡は来なかった。完全な無駄足だった上に、屈辱感と無力感で苦しめられただけだった。


続く!

私が教師を辞めるまで⑤

初めて受けたIT企業の面接。最初は「31歳で未経験がエンジニアになろうとするとは、なにゆえぞ?」と訝しがられたが、話していくうちに社長と意気投合して話が弾み、仲が良い感じになって面接を終えた。


面接後、課題は期日までに必死に勉強し、なんとか提出をした。翌日の朝には「課題を確認するので数日待ってほしい」との連絡が入った。まぁ、最低限のことはやったし、及第点くらいはもらえるだろう。未経験なのだから、ある程度の間違いがあっても大目に見てもらえるはず。それに、この前、あれだけ長く話して打ち解けられたのだから、人柄採用の可能性もあるだろう。


そして、俺はもうすっかり決まったつもりでいたので、次の役員面接のことを考えていた。


しかし、待てど暮らせど結果が返ってこない。数日間がとてつもなく長い。


かといって催促のメールを送るのも憚られる。もしかしたら、突然のトラブル等で俺のことを考えられないくらい忙しくなっているのかもしれない。


そんなこんなでメールを頻繁にチェックする日々を送っていたら、3月も終わりに近づいた。最後の勤務日である3月30日では、職場で納会を兼ねた送別会が行われた。


「先生が今年度でお辞めにやると聞いて驚きました。次はどこかの学校でお勤めになるんですか?」


「いや、私はもう、教師ではない他の職業に就こうかと考えていまして。ITの世界に飛び込もうと思って…」


「ぇー、そうなんですか、もったいない。もう、就職先は決まっているんですか?」


「いえ、まだ結果待ちで…」


と、なんとも歯切れの悪い会話をあちこちでするハメになった。その会の合間にトイレに入って、メールをチェックする。しかし、メールは来ていない。


それから3月も終わってしまい、4月になった。


4月最初の平日。テレビでは新社会人の話や新生活の話などがたくさん取り上げられていた。俺は初めて「無職」という肩書きになった。


朝、起きて、久しぶりにロードバイクに乗って、お気に入りの場所に出かけた。1人でボーッとできる、人の往来の少ない場所だ。今まで仕事やプログラミングの勉強等で、ずっと乗っていなかった。

 

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空がとても青くて、気持ちがよかった。これが自由の空か。

 

これが自由なのだと解放感に満ち溢れていた。もう、これからは授業のことや生徒対応のことなど、常に10個以上あった「やらねばならない」ことを考えなくても済む。休日だって頭の中からずっと離れず、心休まる時間なんか無かった。失敗ばかりで「なんで自分はできないんだろう…」と溜息をつくことももうない。自己否定に苦しめられる日々からも卒業だ。

 

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今日は俺が自由を手にした日ということで、手帳には「独立記念日」と書き込んでみた。


自由を手にした青空を眺めながら、ケータイをチェックする。自由になったものの、未来は見えないでいた。さすがに4月に入っても連絡がないのはおかしい。課題を提出してから1週間以上は経過している。面接でも、3月中に決まらないと無職になってしまうという旨は伝えたはずだ。


さすがに催促のメールを送ってもいい頃だ。俺は、企業に課題についてどうなっているのかのメールを送信した。すると、すぐに返信がきた。


「遅くなってしまい申し訳ありません。すぐに課題のチェックをし、結果を今日の午後には返信いたします」


って、まだチェックしていなかったのか!!


驚いた。もし、俺がメールを送らなかったら、完全に無視されていた。課題を送った翌日に連絡を送ってもらったものの、あれから中身さえ確認さえしてくれてなかったのだ。


しかし、ポジティブに考えれば、これは採用前提だからかもしれない。採用前提だからこそ、課題のチェックをそこまで念入りにしなくてもいいという考え方だったのかも。まさか、ここまで引き伸ばされて不採用を突きつけるなんてことはないだろう。


ニートになった俺の生活は1週間くらいなものだろうと思った。すぐに役員面接の日程の確認がきて、採用されると思っていた。


平日の昼間に、空を眺めてボーッとしているなんて生活は長くは続かないだろう。


「いやー、ニートになったけど、わずか1週間で終わったよ。人生、ニート生活歴が1週間できちゃったよ、テヘペロ☆」


って、来週くらいには笑っているんだろうな。


一通り自由を謳歌し、帰宅した頃には夜になっていた。それからケータイを開き、メールをチェックする。すると、企業から課題の結果が返ってきていた。


「課題をチェックしました。添削の結果を添付するので今後の学習の参考にしてください。また、採用の件ですが、慎重に検討しましたが、残念ながら不採用とさせていただきます」


今まで解放感に酔いしれていた俺は一気に青ざめた。全身が熱くなっていき、頭に血が上っていった。


不採用。


まさかの、不採用である。


これだけ待たされて、催促のメールを送ってようやく返事がきて、不採用。


逆だったのだ。採用前提だから、課題のチェックが遅れたのではなく、不採用を前提としていたから課題をチェックしなかったのだ。もしかすると、そのまま流そうとしていたのかもしれない。


メールの文言の「慎重に検討」とは、一体何を検討したのか、俺がメール送るまで動かなかったクセに。

 

そして、面接で日付が変わるまで話した時間はなんだったのか。なによりも、この結果を待ち続けた時間はなんだったのか。

 

3月の1週目に応募し、2週目に書類選考通過の結果を受け取り、3週目に1次面接をして課題を提出し、4週目に結果を待ち続けた。この1ヶ月間の結果がこれである。


俺のニート生活は終わりではなかった。むしろ、ここからが俺のニート生活の始まりだった。

 

俺も悪いのだ。1社では無く複数の企業に応募しておけば、4月までにどこかしら決まっていたはずだ。

 

続く!!