ジーコとケンジの欲望の記録

雨ニモマケテ、風ニモマケテ、慾マミレ、サウイウヒトガ、コノワタシダ

なぜ俺は、自己肯定感が低いのか?

俺は自己肯定感が低い。
 
自分はダメな人間だ、と常に自分を罵倒しながら毎日を生きている。
 
何か失敗をしてしまった時はもちろんだが、何でもないときでも自分を責め続けている。休日に昼頃まで寝ていれば「せっかくの休みをダラダラしている俺、死ね」となるし、休日に読もうと思った本を読めずにいると「やろうと思ったことができない俺、死ね」とかなる。
 
自分の心が安まる時間は、眠りについている時くらいなものだ。
 
自己肯定感の低さは、成功体験がないということもそうなのだが、子供の頃に褒められた経験がないことも影響しているのだという。小さい頃から、「お前はダメな人間だ」と言われ続けると、自己肯定感の低い人間になってしまうらしい。
 
母と以前、自己肯定感について話すことがあった。
 
「自分にダメだ、とかそんなに思い詰めることかしらね。だって、人間には得意不得意があるのだから、出来ないことがあるのは当然じゃない? だったら、自分ができることに力を注げばいいんじゃないかしら?」
 
「いや、自己肯定感の低い人は、そもそも『自分には得意なことは何もない』と悩んでしまうから。得意なことを伸ばすとか以前の問題なんだよ」
 
「分からない。どうしてそんな風になっちゃうのかしらね?」
 
「どうやら、子供の頃に褒められた経験がないのもあるようで、子供の頃に『お前はダメな奴』と叱られた経験を持っていると、自己肯定感の低い大人になるらしいよ」
 
「ふぅん、そんなものかしらね」
 
「俺も小さい頃は、ずっと親に『お前はダメな奴』って言われて育ったからね。だから今、自己肯定感の低い人間になっちゃったんだよ…」
 
言ってから「しまった」と思った。
 
冗談っぽく言ったつもりだったが、この言い方は俺の育て方を紛糾しているように捉えられてしまうではないか。
 
だからこのあと、
 
「私のせいだと言いたいの? そんなことない。私はあなたを褒めて育てたつもりよ!!」
 
と反論されるとドキドキして次の言葉を待った。
 
しかし、俺が冷や汗を流している中で、母は突然、俺に頭を下げた。
 
「ごめんなさいね。確かに私はあなたを叱ってばかりいたかもしれない。
 
だって、あなた、みんなといつも違う行動をとるんですもの。家族と行動していても一人だけ違う動きをする、弟たちがちゃんと従っているのに、お兄ちゃんのあなたはいつも勝手なことをしている。気がついたら、みんなと違う方向を向いて一人だけ違うことをしている。
 
そんな姿をみたら『どうしてみんなと同じようにできないの!!』って怒ってしまいたくなるわよ…」
 
そうか…
 
そうくるのか…
 
そこは、反論しないのか。
 
そんなことない!って噛みついてこないのか。
 
それはそれで、逆に寂しい気持ちになる。
 
「あなたがここまで大きくなれたのは誰のおかげだと思っているのか!」
 
ぐらいに感情を露わにして欲しかった。
 
認めないで欲しかったな。
 
そういうわけだから、俺がいつも「自分、死ね」って思っているのは、親が俺にした「お前はダメな奴」という叱責が原因だ。
 
だから、仕方ないのである。
 
ぇ、何ですか?
 
「それはただの言い訳じゃないのか? 子供の頃、親にどんなことを言われたって、ちゃんと自分に自信がある人だっているのだ。自分がダメなのを親の育て方にするのは、違うと思う。そうやって責任を転嫁しているうちは、いつまでも君は自己肯定感の低いままの人間だぞ?」
 
ですって?
 
うるせぇ、死ね。
 
そうやって正論を振りかざす、お前が、死ね。
 
俺は死なねぇ。